一週間で帰ると言った父が、迷宮から二十七年ぶりに帰ってきた

全編(短編・1話)

二十七年ぶりに父が帰ってくる。再会そのものより、待っていた家族にも地下に残された父にも二十七年の生活があったことを描く短編。

4.5/ 5
父と息子二十七年の別離待つ側の時間帰還札夫婦のすれ違い暮らしが続く再会豆の煮込み
2026-09-10

父が迷宮へ出たのは、俺が七歳の時だった。 「一週間で帰る」 そう言って家を出た五日後、迷宮の第六層で大崩落が起きる。 父を含む測量隊八人は、地下に取り残された。

持ち主が死ねば黒くなる《帰還札》。 父の札は、何年経っても白いままだった。

俺は大人になり、やがて北門で冒険者たちの帰還を確認する仕事に就いた。 父は帰ってこなかった。

そして二十七年目。 長く閉ざされていた旧第六層へ、新しい道がつながる。

ある日、いつものように帰還者を迎えていた俺の前に、一人の老人が立った。

ネタバレなし感想

タイトルの時点で父が帰ってくることは分かっています。それでも先を読みたくなるのは、冒頭が「父の帰還札を、俺は七年前にギルドから盗んだ」から始まるからです。帰ってくるかどうかではなく、なぜ札を盗んだのか、二十七年のあいだに家族がどうなったのかへ興味が移ります。

《帰還札》の仕組みも分かりやすいです。生きている限り札は白い。それなのに助けられない。この単純な仕組みだけで、希望を捨てきれないまま生活だけは続いていく家族の状態が伝わります。

この話で印象に残るのは、迷宮そのものよりも靴や屋根、仕事、食事といった日常です。待つことだけに人生を止めず、それでも完全には忘れられない。長い年月を大げさな説明ではなく、暮らしの変化で見せているところが良かったです。

ネタバレあり感想

辛口評価